「スタッフの人件費を削ればいいのか」「家賃交渉すれば利益が出るのか」「材料費を安くすれば何とかなるんじゃないか」——美容室経営でこういう発想が頭をよぎったことはありませんか。
あるいは逆に、「Hotpepperの掲載料が月10〜15万円もかかっているのに、それをやめる決断ができない」「広告費は削れない気がして、毎月同じ額を払い続けている」という方も多い。
経費を削ろうとして、削ってはいけない部分を削って売上が落ちる。その一方で、削れるはずの経費をズルズルと払い続けている——この判断ミスが、美容室の利益を静かに蝕んでいます。
今回は、21年間・833件以上の店舗経営支援に携わってきた経験から、「削れる経費」と「削れない経費」を正しく見極めるための5つのポイントを解説します。
📋 この記事でわかること
- 美容室経営における「削ってはいけない経費」の考え方と理由
- 実は削れる経費の代表格と、その見直し方の具体例
- ポータルサイト依存コストを段階的に下げていく現実的な戦略
- コスト削減と集客強化を同時に実現するための思考順序
こんな方におすすめ
- ✅ 毎月の経費を見直したいが、何から手をつけていいかわからないオーナーさん
- ✅ Hotpepperや広告費が利益を圧迫していると感じている方
- ✅ 「削ると売上が落ちる」と思って経費削減に踏み出せない方
- ✅ 複数店舗を運営していて管理コストが膨らんでいるオーナーさん
- ✅ 利益体質のサロンに変えるための思考の枠組みを知りたい方

「経費を削る=節約」という思い込みが利益を遠ざける
まず最初に、大前提としてお伝えしたいことがあります。
経費削減を考えるとき、多くのオーナーさんが「いかに支出を減らすか」というゼロサム的な発想で考えてしまいます。でも経営においてコストは大きく2種類に分かれます。「使えば使うほど収益が育つ投資的コスト」と「使っても使っても資産として残らない消耗的コスト」です。
削るべきは後者であり、前者を削ることは売上の根を刈ることと同義です。
「お金をかけずに売上を伸ばしたいというのは、気持ちはわかる。でも、正しい場所に正しく投資することを避けて繁盛した店を、私は21年間で一度も見たことがない。」
ハワードジョイマン(中小企業診断士・店舗利益最大化コンサルタント)
私自身、独立直後に全財産を使い果たした経験があります。その状況から再起できたのは「削る」のではなく「正しく投資する場所を見つけた」からでした。この視点が、経費の判断軸の土台になります。
削れない経費①:技術・サービス品質に直結するもの
削ってはいけない経費の筆頭は、技術品質とサービスの根幹に関わるコストです。
具体的には、薬剤・カラー剤・トリートメント剤などの施術材料費、スタッフの技術研修費、施術道具のメンテナンス・買い替え費用などが該当します。
「材料費を少し安いものに変えれば浮く」という発想は一見合理的に見えます。しかし施術のクオリティが下がれば、リピート率が落ちます。客数×客単価×来店頻度という売上の方程式で考えると、来店頻度が落ちることは売上への打撃が最も大きい。
美容室の利益は「新規を取り続けること」ではなく「来てくれたお客様にまた来ていただくこと」で生まれます。その軸である技術品質へのコストを削るのは、長期的に見て最もコストパフォーマンスが悪い選択です。
チェックポイント①:材料費の削減が品質低下につながっていないか
原価率だけを見て薬剤を切り替えた結果、仕上がりの評判が下がり、Googleレビューの点数が落ちたという事例は少なくありません。材料費の見直しは「同等品質でより安い仕入れ先を探す」という方向が正解です。
✅ ポイント:材料費の見直しは「削る」のではなく「代替調達ルートを探す」という視点で行うこと。品質を維持したまま仕入れ単価を下げる交渉や、まとめ発注による単価引き下げを検討する。
削れない経費②:顧客接点・集客の「資産になるもの」
次に削ってはいけないのが、将来の集客資産になる投資です。
ただし、ここには重要な注意点があります。「集客のための費用なら全部削れない」と思い込むのは間違いで、「資産として積み上がるかどうか」が判断基準になります。
例えば、自社のWordPressサイトに蓄積されるブログ記事は、今日書いた記事が3年後も検索流入を生み続けます。これは資産です。一方、ポータルサイトへの月10〜15万円の掲載料は、払い続けることで集客は維持できますが、支払いを止めた瞬間にゼロに戻ります。これは消耗コストです。
同じ「集客費用」という括りでも、この2つは経営に対する意味がまったく異なります。
✓ ここまでのポイント
- コストは「投資的コスト」と「消耗的コスト」の2種類に分けて考えることが基本
- 技術品質に直結する材料費・研修費は削れない経費の代表格
- 集客費用も「資産として残るか」を基準に仕分けすることが重要
削れる経費の代表格:ポータルサイト依存コストの見直し
ここからが本題のひとつです。
美容室経営において、削れる経費の最大候補のひとつがポータルサイトの掲載料です。Hotpepperなどへの掲載料が月10〜15万円、年換算で120〜180万円に達しているオーナーさんは珍しくありません。
問題は「やめれば新規が止まる」という心理的なロックインです。これが「削りたいけど削れない」という状況を生み出しています。
ただし、解決策は「今すぐやめる」ではありません。自社サイトへの検索流入が育つにつれて、掲載プランを段階的に縮小していく「軟着陸型」の移行が現実的です。
実際に、自社ブログへの記事蓄積が150〜200記事を超えたあたりから、「縮毛矯正 地域名」「ヘアカラー 駅名」といったローカル検索での順位が安定し始め、ポータル経由への依存度が下がり始めるケースが多く報告されています。
「導入から半年で150記事に達し、縮毛矯正×地域名で検索1位を獲得。Hotpepperの掲載料を半額以下に圧縮できた」
38歳・個人サロンオーナー
この方の場合、ポータルへの支払いが半額以下に圧縮されたことで、年間で数十万円のコスト削減と、同時に自社メディアという資産の蓄積が両立できました。
チェックポイント②:ポータルサイトの費用対効果を数字で把握しているか
「Hotpepperから月に何人来て、そのうち何人がリピートしているか」を把握していないオーナーさんは多いです。クーポン目当ての一見客が大半で、リピート率が低ければ掲載料の費用対効果は著しく低くなります。
✅ ポイント:ポータル経由の新規客のリピート率を計算してみること。リピート率が30%を下回っているなら、そのコストは明らかに見直しのフェーズにある。
削れる経費③④⑤:その他の見直しポイント3選
チェックポイント③:外注コンテンツ費用が資産になっているか
ブログやSNS投稿を外注している場合、その費用が「自社ドメインの資産」として積み上がっているかを確認してください。月に数万円を払っていても、記事の本数が少なく、サロンの個性が出ていない汎用的な内容なら、コストに見合った効果は期待できません。
✅ ポイント:外注費の削減は「ゼロにする」のではなく「より効率的な仕組みに置き換える」こと。AIを活用した自動化システムに移行することで、コストを大幅に下げながら記事の本数と専門性を同時に高めることができる。
チェックポイント④:複数店舗の管理コストが店舗数に比例して膨らんでいないか
2〜3店舗を展開しているオーナーさんの場合、各店舗分の外注費や管理工数が「店舗数×コスト」で単純に積み上がっているケースが多いです。
✅ ポイント:複数店舗の集客コストは「店舗数に比例しない仕組み」に切り替えることが経営拡大のカギ。各店舗を個別設定で一元管理できるシステムに移行することで、新店舗を出しても管理コストをほぼ一定に保てる。
「5サイトを月¥16,500で自動管理できるようになり、複数店舗の外注費がほぼゼロになった」
45歳・2店舗展開オーナー
チェックポイント⑤:「なんとなく続けているサブスク・ツール費用」を棚卸しているか
予約管理ツール、会計ソフト、SNS予約投稿ツール、分析ツール——こういったサブスクリプション型の費用は、気がつくと月に数万円規模になっていることがあります。しかも「使っていないけど解約するのが面倒」なものが含まれていることも。
✅ ポイント:年に一度、ツール費用を全棚卸しする習慣をつけること。「使用頻度」と「代替手段の有無」を基準に、使っていないものは即解約。複数機能を持つツールへの統合で管理コストを削減する。
「削る」の前に「投資する場所を変える」という発想転換
ここまで5つのポイントを見てきましたが、最後に最も大切な視点をお伝えします。
利益を残すために本当に効いてくるのは、「削る努力」よりも「お金の流れ先を変える判断」です。
ポータルに流れていた月15万円を、自社メディアを育てる投資に振り向ける。外注ライターに払っていた費用を、AIを活用した自動化システムに置き換える。店舗数×外注費という構造を、一元管理できるシステムに切り替える。
こうした「投資先の変換」は、単なるコスト削減ではなく、経営の体質を変える判断です。消耗するお金を、積み上がる資産に変えていく——これが、利益を残す美容室経営の本質的な考え方です。
「コスト削減の相談を受けるとき、私がまず聞くのは『その費用は積み上がっていますか?』という一言だ。削る前に、お金の行き先を変えるだけで利益体質が変わるケースの方が、はるかに多い。」
ハワードジョイマン(中小企業診断士・増益繁盛クラブ主宰)
まとめ:利益を残す経費の考え方は「削る」より「見極める」
美容室経営における「削れる経費・削れない経費」の5つのポイントをまとめます。
- 技術品質・サービスに直結するコストは削らない
- 「資産として積み上がる集客費用」と「消耗するだけの集客費用」を仕分ける
- ポータルサイト依存コストは「即やめる」ではなく「段階的に移行する」
- 外注コンテンツ費用は「効率的な仕組みへの置き換え」で削減する
- 複数店舗の管理コストは「店舗数に比例しない構造」に切り替える
経費の見直しは、正しい順序と判断基準があってこそ効果を発揮します。感覚や焦りで削る場所を間違えると、かえって売上が落ちて利益が減るという逆効果になりかねません。
自社の経費を「投資的コスト」と「消耗的コスト」に仕分けするところから、今日始めてみてください。
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